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絶対に見てはいけない画像

この話は「お憑かれさま」と呼ばれるもので、2006年に実際に2chのオカルト板に書き込まれた内容です。
当ブログではその一連の流れをコピペとして掲載いたします。

呪い・暗示と関連のあるものなので、
苦手な方や暗示等にかかりやすいかたは閲覧はご遠慮ください。

この記事を読まれる方は自己判断、自己責任でお願いいたします。

 
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洒落怖
人間が一番怖い
2chであった怖い話
@PC・ネット

黒い斑点

今から5年前、僕がまだ大学生の時の話しです。
当時、東京郊外にあるアパートで一人暮らしをしていて、寝る時は布団を1組ギリギリ敷けるくらいの狭いロフトで寝ていました。

ある冬の夜の事、いつものようにロフトで寝ていると、ガサガサ変な物音で目が覚めました。
眠い目を擦り、ロフトから顔だけ出し下の部屋を見てみると、暗闇の中何かが部屋の中をグルグル動き回ってるのがわかりました。

まだ寝ぼけていたので、最初は犬か猫でも迷い込んで来たのかな?って思っていたのですが、だんだん目が覚めて来て、そんな訳ないだろ!って気付きました。
ビビリながらも息を潜めてじっと見ていると、目が慣れてきて動いているそれが何かわかりました。

それの正体は5~6才くらいの人間(?)の男の子で、手首から先が無いのに四つん這いで部屋の中を走り回っていました。
男の子は裸で髪の毛が所々しか生えて無く、良く見ると体に黒い斑点がポツポツと幾つも有り、ガリガリにやせ細っています。

僕はあまりの出来事に恥ずかしながら思いっきり「ギャー!!!」と悲鳴をあげ、喚き散らしてしまいました。

男の子はゆっくりこちらを見ると「アァー…ゥアァー…」と言いながら、凄い勢いでロフトの下へ来て、こちらに向かってジャンプし始めました。
さすがにロフトまではジャンプしても届かないのですが、男の子は狂ったようにピョンピョン飛び跳ねています。

僕は後ずさりし、ロフトの隅で枕を抱えガタガタ震えていたのですが、ふとロフトと下の部屋を繋ぐハシゴが目に入りました。
あのハシゴに気付かれたら終わりだと思い、震えながらもハシゴをロフト側にあげようとしていると、さっきまでジャンプしていた男の子が僕の行動に気付き、手首から先が無い腕でハシゴにしがみ付いてきました。

この時初めて男の子の顔を見たのですが、目は両目とも黒目が異常に大きく、上唇が真ん中から鼻まで裂けていました。
黒い斑点は顔にもありました。

僕はハシゴから男の子を振り払おうと、ハシゴを上下に揺すったのですが、男の子は腕を絡めつけ中々離れません。
僕はあまりの怖さに力が抜け、手が滑りハシゴを下の部屋に落としてしまいました。
ガタン!!という音が響き、思わず目を閉じてしまいましたが、恐る恐る目を開けてみると男の子はどこにもいません。

僕は何が何だかわからず呆然としていると後ろから「キキキ…」と声がし、ビックリして振り返るといつの間にか後ろに男の子がいて、黒い目を光らせこちらを見てニタニタ笑っていました。
驚きのあまり僕はロフトから転がり落ち、体を強打したにも関わらず、急いで起き上がり玄関へ向かって猛ダッシュしました。

その後、近くに住む友人の家まで行ったのは覚えているのですが、気が付くと病院のベッドで寝ていました。

友人曰く、夜中にインターホンが何度も鳴り僕が「助けて!ヤバイ、助けて!」と叫んでいるので、何事かと思い玄関を開けると僕が血だらけで座っていたそうです。
僕は友人の顔を見るなり気絶してしまったらしく、友人は救急車を呼び、僕は病院に運ばれそのまま丸一日寝ていたらしいです。

僕は幸い右手を捻挫しただけで、後は細かい擦り傷程度でしたが、医者や友人に事の経緯を話すと、頭を打ったんじゃないかと思われ何度も検査されました。
アパートには友人に行ってもらい入院用の着替えなどを取ってきてもらったのですが、ハシゴが落ちていただけで何もいなかったと言っていました。

僕もあれが現実とは思えず、夢でも見ていたのだろうと思う事にしました。
今でもそう思っています。というか思いたいです。

ただその事件後半年くらい背中に黒い斑点がポツポツ出てきましたが…。
 
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洒落怖
@家・自宅

バックルーム

これは従兄弟のバイト先の店長の話。
その店長の奥さんがコンビニを経営していてオープン直後の深夜作業の最中の事。

仕事をしていたのは午前3爾頃でその店長とバイトの子の二人。
夜中でしかもまだオープンしたばっかりで客もいなかったので休憩を二人で交代でとることにし、先にバイトの子を休ませることにしたそうです。
バイトの子は近くのファミレスに夜食を食べにいき店内にはその店長がバックルームで一人になってしまいました。

その時店内の棚と棚のスキマに6歳位の男の子が座っているのが監視カメラに写ったそうです。

その時店長は「ん~、お母さんはどこかなあ?」とカメラを見ても誰もいません。
迷子だと思い仕方なく店内に出ると誰もいません。
「そっかぁ、家に帰ったんだなぁ♪」と思ってバックルームに戻るとカメラにはまだ子供が居ました。
「あ、そうか多分再生画像だったんだ♪」と思いビデオを見ても『録画』でリアルタイム映像。

取り敢えず無視する事を決め暫くたってもう一度画面を見ると誰も居なくなっていたので「やっと僕帰ったんだね・・・」と思い別な画面を見ると・・・場所を変えまだいたそうです。

そうこうしてるうちにバイトの子が帰って来たのをカメラで確認していたらバイトの子はその子供にぶつかった筈なのに気が付かないで戻って来ました。
しかも子供がすり抜けてしまった!!

すかさず店長「今、子供いたよね!!!???」
バイト「いないっすよ!」

録画をバイトの子に見せると「・・・・・・・」言葉が出る筈も有りません。

仕方ないので二人ともなるべくカメラを見ないようにしてたらしいけどバイトの子が嫌な事実に気が付いてしまったそうです。

「あの子だんだんバックルームに近づいてますよ・・・・・」
 
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洒落怖
@スーパー・コンビニ

フリークライミングが趣味のK

会社の同僚が亡くなった。

フリークライミングが趣味のKという奴で、俺とすごく仲がよくて、家族ぐるみ(俺の方は独身だが)での付き合いがあった。
Kのフリークライミングへの入れ込み方は本格的で、休みがあればあっちの山、こっちの崖へと常に出かけていた。

亡くなる半年くらい前だったか、急にKが俺に頼みがあるといって話してきた。

「なあ、俺がもし死んだときのために、ビデオを撮っておいてほしいんだ」

趣味が趣味だけに、いつ命を落とすかもしれないので、あらかじめビデオメッセージを撮っておいて、万が一の際にはそれを家族に見せてほしい、ということだった。
俺はそんなに危険なら家族もいるんだから辞めろといったが、クライミングをやめることだけは絶対に考えられないとKはきっぱり言った。
いかにもKらしいなと思った俺は撮影を引き受けた。

Kの家で撮影したらバレるので、俺の部屋で撮ることになった。
白い壁をバックに、ソファーに座ったKが喋り始める

「えー、Kです。このビデオを見てるということは、僕は死んでしまったということになります。
○○(奥さんの名前)、××(娘の名前)、今まで本当にありがとう。僕の勝手な趣味で、みんなに迷惑をかけて本当に申し訳ないと思っています。
僕を育ててくれたお父さん、お母さん、それに友人のみんな、僕が死んで悲しんでるかもしれませんが、どうか悲しまないでください。僕は天国で楽しくやっています。
皆さんと会えないことは残念ですが、天国から見守っています。
××(娘の名前)、お父さんはずっとお空の上から見ています。
だから泣かないで、笑って見送ってください。ではさようなら」

もちろんこれを撮ったときKは生きていたわけだが、それから半年後本当にKは死んでしまった。
クライミング中の滑落による事故死で、クライミング仲間によると、通常、もし落ちた場合でも大丈夫なように下には安全マットを敷いて登るのだが、このときは、その落下予想地点から大きく外れて落下したために事故を防ぎきれなかったのだそうだ。

通夜、告別式ともに悲壮なものだった。
泣き叫ぶKの奥さんと娘。俺も信じられない思いだった。まさかあのKが。

一週間が過ぎたときに、俺は例のビデオをKの家族に見せることにした。
さすがに落ち着きを取り戻していたKの家族は俺がKのメッセージビデオがあるといったら、是非見せて欲しいと言って来たのでちょうど初七日の法要があるときに、親族の前で見せることになった。

俺がDVDを取り出した時点で、すでに泣き始める親族。
「これも供養になりますから、是非見てあげてください」とDVDをセット

ヴーーーという音とともに、真っ暗な画面が10秒ほど続く。
あれ?撮影に失敗していたのか?と思った瞬間、真っ暗な中に突然Kの姿が浮かび上がり、喋り始めた。
あれ、俺の部屋で撮ったはずなんだが、こんなに暗かったか?

「えー、Kです。このビデオを…るということは、僕は…んでしまっ…いう…ります。○○(奥さんの名前)、××(娘の名前)、今まで本…ありが…」

Kが喋る声に混ざって、さっきからずっと鳴り続けているヴーーーーーーという雑音がひどくて声が聞き取りにくい。

「僕を育ててくれたお父さん、お母さん、それに友人のみんな、僕が死んで悲しんでるかもしれませんが、どうか悲しまないでください。
僕はズヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア××(娘の名前)、お父さん死んじゃっヴァアアアアアアアアアアアアア死にたくない!
死にズヴァアアアアアアアにたくないよおおおおヴヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア、ザッ」

背筋が凍った。
最後の方は雑音でほとんど聞き取れなかったが、Kの台詞は明らかに撮影時と違う断末魔の叫びのような言葉に変わり、最後Kが喋り終わるときに暗闇の端から何かがKの腕を掴んで引っ張っていくのがはっきりと見えた。

これを見た親族は泣き叫び、Kの奥さんはなんて物を見せるんだと俺に掴みかかり、Kの父親は俺を殴りつけた。
奥さんの弟が、K兄さんはいたずらでこういうものを撮るような人じゃないとなだめてくれたおかげでその場は収まったが、俺は土下座をして、すぐにこのDVDは処分しますといってみんなに謝った。

翌日、DVDを近所の寺に持っていったら、処分をお願いしますという前に、住職がDVDの入った紙袋を見るや否や「あ、それはうちでは無理です」と。
代わりに、ここなら浄霊してくれるという場所を教えてもらい、行ったがそこでも「えらいとんでもないものを持ってきたね」と言われた。

そこの神主(霊媒師?)によると、Kはビデオを撮った時点で完全に地獄に引っ張り込まれており、何で半年永らえたのかわからない、本来ならあの直後に事故にあって死んでたはずだと言われた。
 
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@家・自宅
洒落怖

顔を両手で覆う人々

21 本当にあった怖い名無し sage 2005/11/17(木) 14:34:21 ID:rAoU3zTq0

人ごみにまぎれて妙なものが見えることに気付いたのは去年の暮れからだ。
顔を両手で覆っている人間である。
ちょうど赤ん坊をあやすときの格好だ。

駅の雑踏の様に絶えず人が動いている中で、立ち止まって顔を隠す彼らは妙に周りからういている。
人ごみの中でちらりと見かけるだけでそっちに顔を向けるといなくなる。
最初は何か宗教関連かと思って、同じ駅を利用する後輩に話を聞いてみたが彼は一度もそんなものを見たことはないという。
その時はなんて観察眼のない奴だと内心軽蔑した。

しかし、電車の中や登下校する学生達、さらには会社の中にまで顔を覆った奴がまぎれているのを見かけてさすがに怖くなってきた。
後輩だけでなく何人かの知り合いにもそれとなく話を持ち出してみたが誰もそんな奴を見たことがないという。
だんだん自分の見ていないところで皆が顔を覆っているような気がしだした。

外回りに出てまた彼らを見かけた時、見えないと言い張る後輩を思いっきり殴り飛ばした。


22 本当にあった怖い名無し sage 2005/11/17(木) 14:34:52 ID:rAoU3zTq0

俺の起こした問題は内々で処分され、俺は会社を辞めて実家に帰ることにした。

俺の故郷は今にも山に飲まれそうな寒村である。
両親が死んでから面倒で手をつけていなかった生家に移り住み、しばらく休養することにした。
幸い独身で蓄えもそこそこある。毎日本を読んだりネットを繋いだりと自堕落に過ごした。
手で顔を覆った奴らは一度も見なかった。
きっと自分でも知らないうちにずいぶんとストレスがたまっていたのだろう。そう思うことにした。

ある日、何気なく押入れを探っていると懐かしい玩具が出てきた。
当時の俺をテレビに釘付けにしていたヒーローである。
今でも名前がすらすら出てくることに微笑しながらひっくり返すと俺のものではない名前が書いてあった。

誰だったか。
そうだ、確か俺と同じ学校に通っていた同級生だ。

同級生といっても机を並べたのはほんの半年ほど。
彼は夏休みに行方不明になった。
何人もの大人が山をさらったが彼は見つからず、仲のよかった俺がこの人形をもらったのだった。


23 本当にあった怖い名無し sage 2005/11/17(木) 14:35:46 ID:rAoU3zTq0

ただの懐かしい人形。だけど妙に気にかかる。
気にかかるのは人形ではなく記憶だ。
のどに刺さった骨のように折に触れて何かが記憶を刺激する。
その何かが判ったのは生活用品を買いだしに行った帰りだった。

親友がいなくなったあの時、俺は何かを大人に隠していた。
親友がいなくなった悲しみではなく、山に対する恐怖でもなく、俺は大人たちに隠し事がばれないかと不安を感じていたのだ。

何を隠していたのか。
決まっている。俺は親友がどこにいったか知っていたのだ。

夕食を済ませてからもぼんやりと記憶を探っていた。

確かあの日は彼と肝試しをするはずだった。
夜にこっそり家を抜け出て少し離れた神社前で落ち合う約束だった。
その神社はとうに人も神もいなくなった崩れかけの廃墟で、危ないから近寄るなと大人達に言われていた場所だ。
あの日、俺は夜に家を抜け出しはしたのだが昼とまったく違う夜の町が怖くなって結局家に戻って寝てしまったのだ。

次の日、彼がいなくなったと大騒ぎになった時俺は大人に怒られるのがいやで黙っていた。
そして今まで忘れていた。


25 本当にあった怖い名無し sage 2005/11/17(木) 14:36:58 ID:rAoU3zTq0

俺は神社に行くことにした。
親友を見つけるためではなく、たんに夕食後から寝るまでが退屈だったからだ。

神社は記憶よりも遠かった。大人の足でもずいぶんかかる。
石段を登ってから神社がまだ原形をとどめていることに驚いた。
とうに取り壊されて更地になっていると思っていた。

ほんの少し期待していたのだが神社の周辺には子供が迷い込みそうな井戸や穴などはないようだ。
神社の中もきっとあのときの大人たちが調べただろう。

家に帰ろうと歩き出してなんとなく後ろを振り返った。
境内の真ん中で顔を両手で覆った少女が立っていた。

瞬きした。少女の横に顔を覆った老人が立っていた。
瞬きした。少女と老人の前に顔を覆った女性が立っていた。
瞬きした。女性の横に古めかしい学生服を着込んだ少年が顔を覆って立っていた。
瞬きした。皆消えた。

前を向くと小学生ぐらいの子供が鳥居の下で顔を覆って立っていた。

俺をここから逃がすまいとするように。
あの夜の約束を果たそうとするように。
 
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@寺・神社

邪視

696 その1 sage 2008/01/17(木) 21:36:23 ID:U3a23e/90

これは俺が14歳の時の話だ。

冬休みに、N県にある叔父(と言ってもまだ当時30代)の別荘に遊びに行く事になった。
本当は彼女と行きたかったらしいが、最近別れたので俺を誘ったらしい。
小さい頃から仲良くしてもらっていたので、俺は喜んで遊びに行く事になった。

叔父も俺と同じ街に住んでおり、早朝に叔父が家まで車で迎えに来てくれて、そのまま車で出発した。

叔父は中々お洒落な人で、昔から色んな遊びやアウトドア、音楽、等等教えてもらっており、尊敬していた。
車で片道8時間はかかる長旅だったが、車内で話をしたり音楽を聞いたり、途中で休憩がてら寄り道したり、本当に楽しかった。

やがて目的地近辺に到着し、スーパーで夕食の食材を買った。
そして、かなりの山道を登り、別荘へ。
それほど大きくはないが、木造ロッジのお洒落な隠れ家的な印象だった。

少し下がった土地の所に、2~3他の別荘が見える。
人は来ていない様子だった。

夕食は庭でバーベキューだった。
普通に安い肉だったが、やっぱり炭火で焼くと美味く感じる。
ホルモンとか魚介類・野菜も焼き、ホントにたらふく食べた。
白飯も飯盒で炊き、最高の夕食だった。

食後は、暖炉のある部屋に行き、TVを見たりプレステ・スーファミ・ファミコンで遊んだり。
裏ビデオなんかも見せてもらって、当時童貞だったので衝撃を受けたもんだった。
深夜になると、怖い話でも盛り上がった。
叔父はこういう方面も得意で、本当に怖かった。
機会があればその話も書きたいが…

ふと、叔父が思い出した様に「裏山には絶対に入るなよ」と呟いた。
何でも、地元の人でも滅多に入らないらしい。マツタケとか取れるらしいが。
関係ないかもしれないが、近くの別荘の社長も、昔、裏山で首吊ってる、と言った。
いや、そんな気味悪い事聞いたら絶対入らないし、とその時は思った。

そんなこんなで、早朝の5時ごろまで遊び倒して、やっとそれぞれ寝ることになった。


697 その2 sage 2008/01/17(木) 21:37:46 ID:U3a23e/90

部屋に差し込む日光で目が覚めた。時刻はもう12時を回っている。
喉の渇きを覚え、1階に水を飲みに行く。
途中で叔父の部屋を覗くと、イビキをかいてまだ寝ている。

寒いが、本当に気持ちの良い朝だ。
やはり山の空気は都会と全然違う。自分の部屋に戻り、ベランダに出て、椅子に座る。
景色は、丁度裏山に面していた。別になんて事はない普通の山に見えた。

ふと、部屋の中に望遠鏡がある事を思い出した。
自然の景色が見たくなり、望遠鏡をベランダに持ってくる。
高性能で高い物だけあって、ホントに遠くの景色でも綺麗に見える。
町ははるか遠くに見えるが、周囲の山は木に留ってる鳥まで見えて感動した。

30分くらい夢中で覗いていただろうか?
丁度裏山の木々を見ている時、視界に動くものが入った。

人?の様に見えた。
背中が見える。頭はツルツルだ。しきりに全身を揺らしている。
地元の人?踊り?
手には鎌を持っている。

だが異様なのは、この真冬なのに真っ裸と言う事。
そういう祭り?だが、1人しかいない。

思考が混乱して、様々な事が頭に浮かんだ。
背中をこちらに向けているので、顔は見えない。
その動きを見て、何故か山海塾を思い出した。

「これ以上見てはいけない」

と本能的にそう感じた。
人間だろうけど、ちょっとオカシな人だろう。気持ち悪い。

だが、好奇心が勝ってしまった。
望遠鏡のズームを最大にする。ツルツルの後頭部。色が白い。

ゾクッ、としたその時、ソイツが踊りながらゆっくりと振り向いた。
恐らくは、人間と思える顔の造形はしていた。鼻も口もある。
ただ、眉毛がなく、目が眉間の所に1つだけついている。縦に。

体が震えた。
1つ目。奇形のアブナイ人。
ソイツと、望遠鏡のレンズ越しに目が合った。
口を歪ませている。笑っている。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

目が合った瞬間、叫んでいた。
涙が止まらない。とにかく、死にたい。
異常なまでの鬱の様な感情が襲ってきた。

死にたい死にたい…半狂乱で部屋を駆け回っていると、叔父が飛び込んで来た。


698 その3 sage 2008/01/17(木) 21:39:21 ID:U3a23e/90

「どうした!?」
「バケモン!!」
「は?」
「望遠鏡!!裏山!!」

叔父が望遠鏡を覗きこむ。

「~~~~~~ッ」

声にならない唸りを上げ、頭を抱え込む。
鼻水を垂らしながら泣いている。
さっきよりは、少し気持ちの落ち着いた俺が聞いた。

「アレ何だよ!!」
「00子~00子~」

別れた彼女の名前を叫びながら、泣きじゃくる叔父。
流石にヤバイと思い、生まれて初めて平手で思いっきり、人の顔をはたいた。
体を小刻みに揺らす叔父。1
0秒、20秒…叔父が俺を見つめてきた。

「邪視」
「じゃし?」
「いいか、俺の部屋の机の引き出しに、サングラスがあるから持ってこい。お前の分も」
「なんで(ry」
「いいから持ってこい!!」

俺は言われるままに、サングラスを叔父に渡した。
震える手で叔父はサングラスをかけ、望遠鏡を覗く。
しばらく、望遠鏡を動かしている。
「ウッ」と呻き、俺に手招きをする。

「グラサンかけて見てみろ。」

恐る恐る、サングラスをかけ、覗き込む。
グラサン越しにぼやけてはいるが、木々の中のソイツと目が合った。

言い様の無い不安がまた襲ってきたが、さっきほどでは無い。
だが心臓の鼓動が異常に早い。
と言うか、さっきの場所では無い…ソイツはふにゃふにゃと奇妙な踊り?をしながら動いている。
目線だけはしっかりこちらに向けたまま…
山を降りている!?まさかこっちに来ている…!?


699 その4 sage 2008/01/17(木) 21:40:47 ID:U3a23e/90

「00、お前しょんべん出るか?」
「は?こんな時に何を…」
「出るなら、食堂に空きのペットボトルあるから、それにしょんべん入れて来い」

そう言うと、叔父は1階に降りていった。
こんな時に出るわけないので、呆然としていたら、数分後、叔父がペットボトルに黄色のしょんべんを入れて戻ってきた。

「したくなったら、これに入れろ」

と言い、叔父がもう1つの空のペットボトルを俺に差し出した。

「いや、だからアイツ何?」
「山の物…山子…分からん。
 ただ、俺がガキの頃、よく親父と山にキャンプとか行ってたが、あぁ、あそこの裏山じゃないぞ?
 山は色んな奇妙な事が起こるからな…
 夜でも、テントの外で人の話し声がするが、誰もいない。
 そんな時に、しょんべんとか撒いたら、不思議にピタッと止んだもんさ…」

そう言うと叔父は、もう一度望遠鏡を覗き込んだ。
「グウッ」と苦しそうに呻きながらも、アイツを観察している様子だ。

「アイツな。時速何Kmか知らんが、本当にゆっくりゆっくり移動している。
 途中で見えなくなったが…間違いなく、このロッジに向かってるんじゃないのか」

「じゃあ、早く車で戻ろうよ」

「多分、無駄だ…アイツの興味を俺たちから逸らさない限りは…多分どこまでも追ってくる。
 これは一種の呪いだ。邪悪な視線、と書いて邪視と読むんだが…」

「さっき言ってたヤツか…でも何でそんなに詳しいの?」
「俺が仕事で北欧のある街に一時滞在してた時…イヤ、俺らが助かったら話そう」
「助かったらって…アイツが来るまでここにいるの?」

「いいや、迎え撃つんだよ」


700 その5 sage 2008/01/17(木) 21:41:44 ID:U3a23e/90

俺は絶対にここに篭っていた方が良いと思ったが、叔父の意見はロッジに来られる前に、どうにかした方が良い、と言う物だった。
あんな恐ろしいヤツの所にいくなら、よっぽど逃げた方がマシだと思ったが、叔父さんは昔からいつだって頼りになる人だった。
俺は叔父を尊敬しているし、従う事に決めた。

それぞれ、グラサン・ペットボトル・軽目の食料が入ったリュック・手持ちの双眼鏡・木製のバット・懐中電灯等を持って、裏山に入っていった。
暗くなる前にどうにかしたい、と言う叔父の考えだった。

果たしてアイツの視線に耐えられるのか?
望遠鏡越しではなく、グラサンがあるとはいえ、間近でアイツに耐えられるのか?
様々な不安が頭の中を駆け巡った。

裏山と言っても、結構広大だ。
双眼鏡を駆使しながら、アイツを探しまわった。
叔父いわく、アイツは俺らを目標に移動しているはずだから、いつか鉢合わせになると言う考えだ。

あまり深入りして日が暮れるのは危険なので、ロッジから500mほど進んだ、やや開けた場所で待ち伏せする事になった。

「興味さえ逸らせば良いんだよ。興味さえ…」
「どうやって?」

「俺の考えでは、まずどうしてもアイツに近づかなければならない。
 だが直視は絶対にするな。斜めに見ろ。
 言ってる事分かるな?目線を外し、視線の外で場所を捉えろ。
 そして、溜めたしょんべんをぶっかける。それでもダメなら…
 良いか?真面目な話だぞ?俺らのチンコを見せる」

「はぁ?」

「邪視ってのはな、不浄な物を嫌うんだよ。糞尿だったり、性器だったり…
 だから、殺せはしないが、それでアイツを逃げされる事が出来たのなら、俺らは助かると思う」

「…それでもダメなら?」
「…逃げるしかない。とっとと車で」

俺と叔父さんは、言い様のない恐怖と不安の中、ジッと岩に座って待っていた。
交代で双眼鏡を見ながら。時刻は4時を回っていた。


701その6sage2008/01/17(木)21:44:14ID:U3a23e/90

「兄ちゃん、起きろ」

俺が10歳の時に事故で亡くなった、1歳下の弟の声が聞こえる。

「兄ちゃん、起きろ。学校遅刻するぞ」

うるさい。あと3分寝かせろ。

「兄ちゃん、起きないと死んじゃうぞ!!」

ハッ、とした。
寝てた??あり得ない、あの恐怖と緊張感の中で。眠らされた??

横の叔父を見る。寝ている。急いで起こす。叔父、飛び起きる。
腕時計を見る、5時半。
辺りはほとんど闇になりかけている。冷汗が流れる。

「00、聴こえるか?」
「え?」
「声…歌?」

神経を集中させて耳をすますと、右前方数m?の茂みから、声が聞こえる。
だんだんこっちに近づいて来る。
民謡の様な歌い回し、何言ってるかは分からないが不気味で高い声。

恐怖感で頭がどうにかなりそうだった。
声を聞いただけで世の中の、何もかもが嫌になってくる。

「いいか!足元だけを照らせ!!」

叔父が叫び、俺はヤツが出てこようとする、茂みの下方を懐中電灯で照らした。
足が見えた。毛一つ無く、異様に白い。体全体をくねらせながら、近づいてくる。

その歌のなんと不気味な事!!一瞬、思考が途切れた。


702 その7 sage 2008/01/17(木) 21:45:39 ID:U3a23e/90

「あぁぁっ!!」
「ひっ!!」

ヤツが腰を落とし、四つんばいになり、足を照らす懐中電灯の明かりの位置に、顔を持ってきた。
直視してしまった。昼間と同じ感情が襲ってきた。
死にたい死にたい死にたい!こんな顔を見るくらいなら、死んだ方がマシ!!

叔父もペットボトルをひっくり返し、号泣している。
落ちたライトがヤツの体を照らす。
意味の分からないおぞましい歌を歌いながら、四つんばいで、生まれたての子馬の様な動きで近づいてくる。
右手には錆びた鎌。

よっぽど舌でも噛んで死のうか、と思ったその時、

「プルルルルッ」

叔父の携帯が鳴った。
号泣していた叔父は、何故か放心状態の様になり、ダウンのポケットから携帯を取り出し、見る。

こんな時に何してんだ…もうすぐ死ぬのに…と思い、薄闇の中、呆然と叔父を見つめていた。
まだ携帯は鳴っている。プルルッ。叔父は携帯を見つめたまま。
ヤツが俺の方に来た。恐怖で失禁していた。死ぬ。

その時、叔父が凄まじい咆哮をあげて、地面に落ちた懐中電灯を取り上げ、素早く俺の元にかけより、俺のペットボトルを手に取った。

「こっちを見るなよ!!ヤツの顔を照らすから目を瞑れ!!」

俺は夢中で地面を転がり、グラサンもずり落ち、頭をかかえて目をつぶった。

ここからは後で叔父に聞いた話。
まずヤツの顔を照らし、視線の外で位置を見る。
少々汚い話だが、俺のペットボトルに口をつけ、しょんべんを口に含み、ライトでヤツの顔を照らしたまま、しゃがんでヤツの顔にしょんべんを吹きかける瞬間、目を瞑る。霧の様に吹く。

ヤツの馬の嘶きの様な悲鳴が聞こえた。
さらに口に含み、吹く。吹く。ヤツの目に。目に。


703 その8 sage 2008/01/17(木) 21:46:49 ID:U3a23e/90

さっきのとはまた一段と高い、ヤツの悲鳴が聞こえる。
だが、まだそこにいる!!

焦った叔父は、ズボンも下着も脱ぎ、自分の股間をライトで照らしたらしい。
恐らく、ヤツはそれを見たのだろう。
言葉は分からないが、凄まじい呪詛の様な恨みの言葉を吐き、くるっと背中を向けたのだ。
俺は、そこから顔を上げていた。叔父のライトがヤツの背中を照らす。

何が恐ろしかったかと言うと、ヤツは退散する時までも、不気味な歌を歌い、体をくねらせ、ゆっくりゆっくりと移動していた!!
それこそ杖をついた、高齢の老人の歩行速度の如く!!

俺たちは、ヤツが見えなくなるまでじっとライトで背中を照らし、見つめていた。
いつ振り返るか分からない恐怖に耐えながら…
永遠とも思える苦痛と恐怖の時間が過ぎ、やがてヤツの姿は闇に消えた。

俺たちはロッジに戻るまで何も会話を交わさず、黙々と歩いた。
中に入ると、叔父は全てのドアの戸締りを確認し、コーヒーを入れた。
飲みながら、やっと口を開く。

「あれで叔父さんの言う、興味はそれた、って事?」
「うぅん…恐らくな。さすがに、チンコは惨めなほど縮み上がってたけどな」

苦笑する叔父。
やがて、ぽつりぽつりと、邪視の事について語り始めてくれた…


704 その9 sage 2008/01/17(木) 21:47:33 ID:U3a23e/90

叔父は、仕事柄、船で海外に行く事が多い。
詳しい事は言えないが、いわゆる技術士だ。

叔父が北欧のとある街に滞在していた、ある日の事。
現地で仲良くなった、通訳も出来る技術仲間の男が、面白い物を見せてくれると言う。
叔父は人気の無い路地に連れて行かれた。
ストリップとかの類かな、と思っていると、路地裏の薄汚い、小さな家に通された。

叔父は中に入って驚いた。
外見はみすぼらしいが、家の中はまるで違った。
一目で高級品と分かる絨毯。壺。貴金属の類…香の良い香りも漂っている。

わけが分からないまま、叔父が目を奪われていると、奥の小部屋に通された。
そこには、蝋燭が灯る中、見た目は60代くらいの男が座っていた。
ただ異様なのは、夜で家の中なのにサングラスをかけていた。
現地の男によれば「邪視」の持ち主だと言う。

邪視(じゃし)とは、世界の広範囲に分布する民間伝承、迷信の一つで、悪意を持って相手を睨みつける事によって、対象となった被害者に呪いを掛ける事が出来るという。
イビルアイ(evileye)、邪眼(じゃがん)、魔眼(まがん)とも言われる。
邪視の力によっては、人が病気になり衰弱していき、ついには死に至る事さえあるという。

叔父は、からかい半分で説明を聞いていた。
この男も、そういう奇術・手品師の類であろうと。

座っていた男が、現地の男に耳打ちした。
男曰く、信じていない様子だから、少しだけ力を体験させてあげよう、と。
叔父は、これも一興、と思い、承諾した。また男が現地の男に耳打ちする。
男曰く、

「今から貴方を縛りあげる。誤解しないでもらいたいのは、それだけ私の力が強いからである。
 貴方は暴れ回るだろう。私は、ほんの一瞬だけ、私の目で貴方の目を見つめる。
 やる事は、ただそれだけだ」


705 その10 sage 2008/01/17(木) 21:48:34 ID:U3a23e/90

叔父は、恐らく何か目に恐ろしげな細工でもしているのだろう、と思ったという。
本当に目が醜く潰れているのかもしれないし、カラーコンタクトかもしれない。
もしくは、香に何か幻惑剤の様な効果が…と。

縛られるのは抵抗があったが、友人の現地の男も、本当に信頼出来る人物だったので、応じた。
椅子に縛られた叔父に、男が近づく。友人は後ろを向いている。
静かに、サングラスを外す。叔父を見下ろす。

「ホントにな、今日のアイツを見た時の様になったんだ」

コーヒーをテーブルに置いて、叔父は呟いた。

「見た瞬間、死にたくなるんだよ。瞳はなんてことない普通の瞳なのにな。
 とにかく、世の中の全てが嫌になる。見つめられたのはほんの、1~2秒だったけどな。
 何かの暗示とか、催眠とか、そういうレベルの話じゃないと思う」

友人が言うには、その邪視の男は、金さえ積まれれば殺しもやるという。
現地のマフィア達の抗争にも利用されている、とも聞いた。

叔父が帰国する事になった1週間ほど前、邪視の男が死んだ、という。
所属する組織のメンツを潰して仕事をしたとかで、抹殺されたのだという。
男は娼婦小屋で椅子に縛りつけれれて死んでいた。
床には糞尿がバラ巻かれていたと言う。

男は、凄まじい力で縄を引きちぎり、自分の両眼球をくり抜いて死んでいたという。


706 その11、終わり sage 2008/01/17(木) 21:49:23 ID:U3a23e/90

「さっきも言った様に、邪視は不浄な物を嫌う。
 汚物にまみれながら、ストリップか性行為でも見せられたのかね」

俺は、一言も発する気力もなく、話を聞いていた。
さっきの化け物も、邪視の持ち主だっという事だろうか。
俺の考えを読み取ったかのように、叔父は続けた。

「アイツが本当に化け物だったのか、ああいう風に育てられた人間なのかは分からない。
 ただ、アイツは逃げるだけじゃダメな気がしてな…だから死ぬ気で立ち向かった。
 カッパも、人間の唾が嫌いとか言うじゃないか。
 案外、お経やお守りなんかよりも、人間の体の方がああいうモノに有効なのかもしれないな」

俺は、話を聞きながら弟の夢の事を思い出して、話した。
弟が助けてくれたんじゃないだろうか…と。
俺は泣いていた。
叔父は神妙に聞き、1分くらい無言のまま、やがて口を開いた。

「そういう事もあるかもしれないな…00はお前よりしっかりしてたしな。
 俺の鳴った携帯の事、覚えてるか?あれな、別れた彼女からなんだよ。
 でもな、この山の周辺で、携帯通じるわけねぇんだよ。
 見ろよ。今、アンテナ一本も立ってないだろ?
 だから、そういう事もあるのかも知れないな…今すぐ、山下りて帰ろう。
 このロッジも売るわ。早く彼女にも電話したいしな」

叔父は照れくさそうに笑うと、コーヒーを飲み干し立ち上がった。
 
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ヒッチハイク

836 本当にあった怖い名無し sage 2009/12/24(木) 22:12:17 ID:NNdtlw3F0

今から7年ほど前の話になる。俺は大学を卒業したが、就職も決まっていない有様だった。
生来、追い詰められないと動かないタイプで(テストも一夜漬け対タイプだ)、「まぁ何とかなるだろう」とお気楽に自分に言い聞かせ、バイトを続けていた。

そんなその年の真夏。
悪友のカズヤ(仮名)と家でダラダラ話していると、なぜか「ヒッチハイクで日本を横断しよう」と言う話に飛び、その計画に熱中する事になった。

その前に、この悪友の紹介を簡単に済ませたいと思う。
このカズヤも俺と同じ大学で、入学の時期に知り合った。
コイツはとんでもない女好きで、頭と下半身は別、と言う典型的なヤツだ。
だが、根は底抜けに明るく、裏表も無い男なので、女関係でトラブルは抱えても、男友達は多かった。
そんな中でも、カズヤは俺と1番ウマが合った。
そこまで明朗快活ではない俺とはほぼ正反対の性格なのだが。

ヒッチハイクの計画の話に戻そう。
計画と行ってもズサンなモノであり、まず北海道まで空路で行き、そこからヒッチハイクで地元の九州に戻ってくる、と言う計画だった。

カズヤは「通った地方の、最低でも1人の女と合体する!」と女好きならではの下世話な目的もあったようだ。
まぁ、俺も旅の楽しみだけではなく、そういう期待もしていたのだが…
カズヤは長髪を後ろで束ね、一見バーテン風の優男なので(実際クラブでバイトをしていた)コイツとナンパに行って良い思いは確かにした事があった。

そんなこんなで、バイトの長期休暇申請や(俺は丁度別のバイトを探す意思があったので辞め、カズヤは休暇をもらった)、
北海道までの航空券、巨大なリュックに詰めた着替え、現金などを用意し、計画から3週間後には俺達は機上にいた。

札幌に到着し、昼食を済ませて市内を散策した。
慣れない飛行機に乗ったせいか、俺は疲れのせいで夕方にはホテルに戻り、カズヤは夜の街に消えていった。

その日はカズヤは帰ってこず、翌朝ホテルのロビーで再開した。
にやついて指でワッカをつくり、OKマークをしている。
昨夜はどうやらナンパした女と上手く行った様だ。


837 本当にあった怖い名無し sage 2009/12/24(木) 22:13:11 ID:NNdtlw3F0

さぁ、いよいよヒッチハイクの始まりだ。
ヒッチハイクなど2人とも人生で初めての体験で、流石にウキウキしていた。
何日までにこの距離まで行く、など綿密な計画はなく、ただ「行ってくれるとこまで」という大雑把な計画だ。

まぁしかし、そうそう止まってくれるものではなかった。
1時間ほど粘ったが、一向に止まってくれない。

昼より夜の方が止まってくれやすいんだろう、等と話していると、ようやく開始から1時間半後に最初の車が止まってくれた。
同じ市内までだったが、南下するので距離を稼いだのは稼いだ。
距離が短くても、嬉しいものだ。

夜の方が止まってくれやすいのでは?と言う想像は意外に当たりだった。
1番多かったのが、長距離トラックだ。
距離も稼げるし、まず悪い人はいないし、かなり効率が良かった。

3日目にもなると、俺達は慣れたもので、長距離トラックのお兄さん用にはタバコ等のお土産、普通車の一般人には飴玉等のお土産、と勝手に決め、コンビニで事前に買っていた。
特にタバコは喜ばれた。
普通車に乗った時も、喋り好きなカズヤのおかげで、常に車内は笑いに満ちていた。
女の子2~3人組の車もあったが、正直、良い思いは何度かしたものだった。

4日目には本州に到達していた。コツがつかめてきた俺達は、
その土地の名物に舌鼓を打ったり、一期一会の出会いを楽しんだりと余裕も出てきていた。

銭湯を見つけなるべく毎日風呂には入り、宿泊も2日に1度ネカフェに泊まると決め、経費を節約していた。
ご好意で、ドライバーの家に泊めてもらう事もあり、その時は本当にありがたかった。

しかし、2人共々に生涯トラウマになるであろう恐怖の体験が、出発から約2週間後、甲信地方の山深い田舎で起こったのだった。


838 その3 sage 2009/12/24(木) 22:14:14 ID:NNdtlw3F0

「おっ♪ おっ♪ おま○こ おま○こ 舐めたいなっ♪ ペロペロ~ ペロペロ~」

男友達だけの集まりになると、いつもカズヤは卑猥な歌を歌いだす。
その夜もカズヤは歌いだした。

その日の夜は、2時間前に寂れた国道沿いのコンビニで降ろしてもらって以来、中々車が止まらず、それに加えてあまりの蒸し暑さに俺達はグロッキー状態だった。
暑さと疲労の為か、俺達は変なテンションになっていた。

「こんな田舎のコンビニに降ろされたんじゃ、たまったもんじゃないよな。
 これなら、さっきの人の家に無理言って泊めてもらえば良かったかなぁ?」とカズヤ。

確かに先ほどのドライバーは、このコンビニから車で10分程行った所に家があるらしい。
しかし、どこの家かも分かるはずもなく、言っても仕方が無い事だった。

時刻は深夜12時を少し過ぎた所だった。
俺たちは30分交代で、車に手を上げるヤツ、コンビニで涼むヤツ、に別れることにした。
コンビニの店長にも事情を説明したら

「頑張ってね。最悪、どうしても立ち往生したら俺が市内まで送ってやるよ」と言ってくれた。

こういう田舎の暖かい人の心は実に嬉しい。
それからいよいよ1時間半も過ぎたが、一向に車がつかまらない。
と言うか、ほとんど通らない。

カズヤも店長とかなり意気投合し、いよいよ店長の行為に甘えるか、と思っていたその時、1台のキャンピングカーがコンビニの駐車場に停車した。

これが、あの忘れえぬ悪夢の始まりだった。


839 その4 sage 2009/12/24(木) 22:15:34 ID:NNdtlw3F0

運転席のドアが開き、コンビニに年齢はおよそ60代くらいかと思われる男性が入ってきた。
男の服装は、カウボーイがかぶるようなツバ広の防止に、スーツ姿、と言う奇妙なモノだった。

俺はその時、丁度コンビニの中におり、何ともなくその男性の様子を見ていた。
買い物籠に、やたらと大量の絆創膏などを放り込んでいる。
コーラの1.5?のペットボトルを2本も投げ入れていた。

その男を、会計をしている最中、じっと立ち読みをしている俺の方を凝視していた。
何となく気持ちが悪かったので、視線を感じながらも俺は無視して本を読んでいた。

やがて男は店を出た。
そろそろ交代の時間なので、カズヤの所に行こうとすると、駐車場でカズヤが男と話をしていた。

「おい、乗せてくれるってよ!」

どうやら、そういう事らしい。
俺は当初は男に何か気持ち悪さは感じていたのだが、間近で見ると、人の良さそうな普通のおじさんに見えた。
俺は疲労や眠気の為にほとんど思考が出来ず、

「はは~ん、アウトドア派(キャンピングカー)だからああいう帽子か」
などと言う良く分からない納得を自分にさせた。

キャンピングカーに乗り込んだ時、「しまった」と思った。

「おかしい」のだ。
「何が」と言われても「おかしいからおかしい」としか書き様がないかも知れない。

これは感覚の問題なのだから…ドライバーには家族がいた。
もちろん、キャンピングカーと言うことで、中に同乗者が居る事は予想はしていたのだが。

父 ドライバー およそ60代
母 助手席に座る。見た目70代
双子の息子 どう見ても40過ぎ


840 その5 sage 2009/12/24(木) 22:16:30 ID:NNdtlw3F0

人間は、予想していなかったモノを見ると、一瞬思考が止まる。

まず車内に入って目に飛び込んで来たのは、まったく同じギンガムチェックのシャツ、同じスラックス、同じ靴、同じ髪型(頭頂ハゲ)、同じ姿勢で座る同じ顔の双子の中年のオッサンだった。

カズヤも絶句していた様子だった。
いや、別にこういう双子が居てもおかしくはない、
おかしくもないし悪くもないのだが…あの異様な雰囲気は、実際その場で目にしてみないと伝えられない。

「早く座って」と父に言われるがまま、俺たちはその家族の雰囲気に呑まれるかの様に、車内に腰を下ろした。

まず、俺達は家族に挨拶をし、父が運転をしながら、自分の家族の簡単な説明を始めた。
母が助手席で前を見て座っている時は良く分からなかったが、母も異様だった。
ウェディングドレスのような、真っ白なサマーワンピース。
顔のメイクは「バカ殿か」と見まがうほどの白粉ベタ塗り。

極めつけは母の名前で、「聖(セント)ジョセフィーヌ」。
父はちなみに「聖(セント)ジョージ」と言うらしい。
双子にも言葉を失った。名前が「赤」と「青」と言うらしいのだ。
赤ら顔のオッサンは「赤」で、ほっぺたに青痣があるオッサンは「青」。
普通、自分の子供にこんな名前をつけるだろうか?

俺達はこの時点で目配せをし、適当な所で早く降ろしてもらう決意をしていた。狂っている。

俺達には主に父と母が話しかけて来て、俺達も気もそぞれで適当な答えをしていた。

双子はまったく喋らず、まったく同じ姿勢、同じペースでコーラのペットボトルをラッパ飲みしていた。
ゲップまで同じタイミングで出された時は、背筋が凍り、もう限界だと思った。


842 その6 sage New! 2009/12/24(木) 22:17:48 ID:NNdtlw3F0

「あの、ありがとうございます。もうここらで結構ですので…」

キャンピングカーが発車して15分も経たないうちに、カズヤが口を開いた。
しかし、父はしきりに俺達を引きとめ、母は「熊が出るから!今日と明日は!」と意味不明な事を言っていた。

俺達は腰を浮かせ、本当にもう結構です、としきりに訴えかけたが、父は「せめて晩餐を食べていけ」と言って、降ろしてくれる気配はない。
夜中の2時にもなろうかと言う時に、晩餐も晩飯も無いだろうと思うのだが…
双子のオッサン達は、相変わらず無口で、今度は棒つきのペロペロキャンディを舐めている。

「これ、マジでヤバイだろ」と、カズヤが小声で囁いてきた。
俺は相槌を打った。
しきりに父と母が話しかけてくるので、中々話せないのだ。
1度、父の言葉が聞こえなかった時など「聞こえたか!!」とえらい剣幕で怒鳴られた。
その時双子のオッサンが同時にケタケタ笑い出し、俺達はいよいよ「ヤバイ」と確信した。

キャンピングカーが、国道を逸れて山道に入ろうとしたので、流石に俺達は立ち上がった。
「すみません、本当にここで。ありがとうございました」と運転席に駆け寄った。

父は延々と「晩餐の用意が出来ているから」と言って聞こうとしない。
母も、素晴らしく美味しい晩餐だから、是非に、と引き止める。

俺らは小声で話し合った。いざとなったら、逃げるぞ、と。
流石に走行中は危ないので、車が止まったら逃げよう、と。

やがて、キャンピングカーは山道を30分ほど走り、小川がある開けた場所に停車した。

「着いたぞ」と父。
その時、キャンピングカーの1番後部のドア(俺達はトイレと思っていた)から「キャッキャッ」と子供の様な笑い声が聞こえた。
まだ誰かが乗っていたか!? その事に心底ゾッとした。

「マモルもお腹すいたよねー」と母。
マモル…家族の中では、唯一マシな名前だ。幼い子供なのだろうか。

すると、今まで無口だった双子のオッサン達が、口をそろえて

「マモルは出したら、だぁ・あぁ・めぇ!!」とハモりながら叫んだ。
「そうね、マモルはお体が弱いからねー」と母。
「あーっはっはっはっ!!」といきなり爆笑する父。

「ヤバイ、こいつらヤバイ。フルスロットル(カズヤは、イッてるヤツや危ないヤツを常日頃からそういう隠語で呼んでいた)」


843 その7 sage New! 2009/12/24(木) 22:20:19 ID:NNdtlw3F0

俺達は、車の外に降りた。
良く見ると、男が川の傍で焚き火をしていた。
まだ仲間がいたのか…と、絶望的な気持ちになった。

異様に背が高く、ゴツい。2m近くはあるだろうか。
父と同じテンガロンハットの様な帽子をかぶり、スーツと言う異様な出で立ちだ。
帽子を目深に被っており、表情が一切見えない。

焚き火に浮かび上がった、キャンピングカーのフロントに描かれた十字架も、何か不気味だった。
ミッ○ーマ○スのマーチ、の口笛を吹きながら、男は大型のナイフで何かを解体していた。
毛に覆われた足から見ると、どうやら動物の様だった。
イノシシか、野犬か…どっちにしろ、そんなモノを食わさせるのは御免だった。

俺達は逃げ出す算段をしていたが、予想外の大男の出現、大型のナイフを見て、萎縮してしまった。

「さぁさ、席に着こうか!」と父。
大男がナイフを置き、傍でグツグツ煮えている鍋に味付けをしている様子だった。

「あの、しょんべんしてきます」とカズヤ。
「逃げよう」と言う事だろう。俺も行く事にした。
「早くね~」と母。

俺達はキャンピングカーの横を通り、森に入って逃げようとしたその時、キャンピングカーの後部の窓に、異様におでこが突出し、両目の位置が異様に低く、両手もパンパンに膨れ上がった容姿をしたモノが、バン!と顔と両手を貼り付けて叫んだ。

「マーマ!!」

もはや限界だった。
俺達は脱兎の如く森へと逃げ込んだ。


844 その8 sage New! 2009/12/24(木) 22:21:39 ID:NNdtlw3F0

後方で、父と母が何か叫んでいたが、気にする余裕などなかった。

「ヤバイヤバイヤバイ」とカズヤは呟きながら森の中を走っている。お互い、何度も転んだ。
とにかく下って県道に出よう、と小さなペンライト片手にがむしゃらに森を下へ下へと走っていった。

考えが甘かった。
小川のあった広場からも、町の明かりは近くに見えた気がしたのだが、1時間ほど激走しても、一向に明かりが見えてこない。完全に道に迷ったのだ。
心臓と手足が根をあげ、俺達はその場にへたり込んだ。

「あのホラー一家、追ってくると思うか?」とカズヤ。
「俺達を食うわけでもなしに、そこは追ってこないだろ。映画じゃあるまいし。
 ただの少しおかしい変人一家だろう。最後に見たヤツは、ちょっとチビりそうになったけど…」
「荷物…どうするか」
「幸い、金と携帯は身につけてたしな…服は、残念だけど諦めるか」
「マジハンパねぇw」
「はははw」

俺達は精神も極限状態にあったのか、なぜかおかしさがこみ上げてきた。
ひとしきり爆笑した後、森独特のむせ返る様な濃い匂いと、周囲が一切見えない暗闇に、現実に戻された。
変態一家から逃げたのは良いが、ここで遭難しては話にならない。
樹海じゃあるまいし、まず遭難はしないだろうが、万が一の事も頭に思い浮かんだ。

「朝まで待った方が良くないか?さっきのババァじゃないけど、熊まではいかなくとも、野犬とかいたらな…」

俺は一刻も早く下りたかったが、真っ暗闇の中をがむしゃらに進んで、さっきの川原に戻っても恐ろしいので、腰を下ろせそうな倒れた古木に座り、休憩する事にした。

一時はお互いあーだこーだと喋っていたが、極端なストレスと疲労の為か、お互いにうつらうつらと意識が飛ぶようになってきた。


845 その9 sage New! 2009/12/24(木) 22:23:04 ID:NNdtlw3F0

ハッ、と目が覚めた。反射的に携帯を見る。
午前4時。辺りはうっすらと明るくなって来ている。
横を見ると、カズヤがいない。
一瞬パニックになったら、俺の真後ろにカズヤは立っていた。

「何やってるんだ?」と聞く。
「起きたか…聞こえないか?」と、木の棒を持って何かを警戒している様子だった。
「何が…」
「シッ」

かすかに遠くの方で音が聞こえた。口笛だった。ミッ○ーマ○スのマーチの。
CDにも吹き込んでも良いくらいの、良く通る美音だ。
しかし、俺達にとっては恐怖の音以外の何物でもなかった。

「あの大男の…」
「だよな」
「探してるんだよ、俺らを!!」

再び、俺たちは猛ダッシュで森の中へと駆け始めた。
辺りがやや明るくなったせいか、以前よりは周囲が良く見える。
躓いて転ぶ心配が減ったせいか、かなりの猛スピードで走った。

20分くらい走っただろうか。少し開けた場所に出た。
今は使われていない駐車場の様だった。
街の景色が、木々越しにうっすらと見える。大分下ってこれたのだろうか。

腹が痛い、とカズヤが言い出した。我慢が出来ないらしい。
古びた駐車場の隅に、古びたトイレがあった。
俺も多少もよおしてはいたのだが、大男がいつ追いついてくるかもしれないのに、個室に入る気にはなれなかった。
俺がトイレの外で目を光らせている隙に、カズヤが個室で用を足し始めた。

「紙はあるけどよ~ ガピガピで、蚊とか張り付いてるよ…うぇっ 無いよりマシだけどよ~」

カズヤは文句を垂れながら糞も垂れ始めた。

「なぁ…誰か泣いてるよな?」と個室の中から大声でカズヤが言い出した。
「は?」
「いや、隣の女子トイレだと思うんだが…女の子が泣いてねぇか?」


846 その10 sage New! 2009/12/24(木) 22:24:27 ID:NNdtlw3F0

カズヤに言われて初めて気がつき、聴こえた。確かに女子トイレの中から女の泣き声がする…
カズヤも俺も黙り込んだ。
誰かが女子トイレに入っているのか?何故、泣いているのか?

「なぁ…お前確認してくれよ。段々泣き声酷くなってるだろ…」

正直、気味が悪かった。
しかし、こんな山奥で女の子が寂れたトイレの個室で1人、泣いているのであれば、何か大事があったに違いない。
俺は意を決して、女子トイレに入り、泣き声のする個室に向かい声をかけた。

「すみません…どうかしましたか?」

返事はなく、まだ泣き声だけが聴こえる。

「体調でも悪いんですか、すみません、大丈夫ですか」

泣き声が激しくなるばかりで、一向にこちらの問いかけに返事が帰ってこない。
その時、駐車場の上に続く道から、車の音がした。

「出ろ!!」

俺は確信とも言える嫌な予感に襲われ、女子トイレを飛び出し、カズヤの個室のドアを叩いた。

「何だよ」
「車の音がする、万が一の事もあるから早く出ろ!!」
「わ、分かった」

数秒経って、青ざめた顔でカズヤがジーンズを履きながら出てきた。
と、同時に駐車場に下ってくるキャンピングカーが見えた。

「最悪だ…」

今森を下る方に飛び出たら、確実にあの変態一家の視界に入る。
選択肢は、唯一死角になっている、トイレの裏側に隠れる事しかなかった。
女の子を気遣っている余裕は消え、俺達はトイレを出て、裏側で息を殺してジッとしていた。

頼む、止まるなよ、そのまま行けよ、そのまま…

「オイオイオイオイオイ、見つかったのか?」

カズヤが早口で呟いた。
キャンピングカーのエンジン音が、駐車場で止まったのだ。
ドアを開ける音が聞こえ、トイレに向かって来る足音が聴こえ始めた。

このトイレの裏側はすぐ5m程の崖になっており、足場は俺達が立つのがやっとだった。
よほど何かがなければ、裏側まで見に来る事はないはずだ。
もし俺達に気づいて近いづいて来ているのであれば、 最悪の場合、崖を飛び降りる覚悟だった。
飛び降りても怪我はしない程度の崖であり、やれない事はない。

用を足しに来ただけであってくれ、頼む…俺達は祈るしかなかった。

しかし、一向に女の子の泣き声が止まらない。
あの子が変態一家にどうにかされるのではないか?それが気が気でならなかった。


847 その11 sage New! 2009/12/24(木) 22:25:32 ID:o41n3rfp0

男子トイレに誰かが入ってきた。声の様子からすると、父だ。
「やぁ、気持ちが良いな。ハ~レルヤ!!ハ~レルヤ!!」と、どうやら小の方をしている様子だった。
その後すぐに、個室に入る音と足音が複数聞こえた。
双子のオッサンだろうか。

最早、女の子の存在は完全にバレているはずだった。
女子トイレに入った母の「紙が無い!」と言う声も聴こえた。
女の子はまだ泣きじゃくっている。

やがて、父も双子のオッサン達(恐らく)も、トイレを出て行った様子だった。

おかしい。女の子に対しての変態一家の対応が無い。
やがて、母も出て行って、変態一家の話し声が遠くになっていった。
気づかないわけがない。現に女の子はまだ泣きじゃくっているのだ。

俺とカズヤが怪訝な顔をしていると、父の声が聞こえた。
「~を待つ、もうすぐ来るから」と言っていた。何を待つ、のかは聞き取れなかった。
どうやら双子のオッサンたちが、グズッている様子だった。
やがて平手打ちの様な男が聴こえ、恐らく、双子のオッサンの泣き声が聴こえてきた。

悪夢だった。
楽しかったはずのヒッチハイクの旅が、なぜこんな事に…
今まではあまりの突飛な展開に怯えるだけだったが、急にあの変態一家に対して怒りがこみ上げて来た。

「あのキャンピングカーをブンどって、山を降りる手もあるな。あのジジィどもをブン殴ってでも。
 大男がいない今がチャンスじゃないのか?待ってるって、大男の事じゃないのか?」

カズヤが小声で言った。
しかし、俺は向こうが俺達に気がついてない以上、このまま隠れて、奴らが通り過ぎるのを待つほうが得策に思えた。
女の子の事も気になる。
奴らが去ったら、ドアを開けてでも確かめるつもりだった。
その旨をカズヤに伝えると、しぶしぶ頷いた。

それから15分程経った時。

「~ちゃん来たよ~!(聞き取れない)」

母の声がした。待っていた主が駐車場に到着したらしい。
何やら談笑している声が聞こえるが、良く聞き取れない。

再び、トイレに向かってくる足音が聴こえて来た。


848 その12 sage New! 2009/12/24(木) 22:26:35 ID:o41n3rfp0

ミッ○ーマ○スのマーチの口笛。アイツだ!!

軽快に口笛を吹きながら、大男が小を足しているらしい。
女子トイレの女の子の泣き声が、一段と激しくなった。
何故だ?何故気づかない?

やがて、泣き叫ぶ声が断末魔の様な絶叫に変わり、フッと消えた。
何かされたのか?見つかったのか!?
しかし、大男は男子トイレににいるし、他の家族が女子トイレに入った形跡も無い。

やがて、口笛と共に大男がトイレを出て行った。
万が一女の子がトイレから連れ出されてはしないか、と心配になり、危険を顧みずに一瞬だけトイレの裏手から俺が顔を覗かせた。
テンガロンハットにスーツ姿の、大男の歩く背中が見える。

「ここだったよなぁぁぁぁぁぁぁァァ!!」

ふいに、大男が叫んだ。俺は頭を引っ込めた。
ついに見つかったか!?
カズヤは木の棒を強く握り締めている。

「そうだそうだ!!」
「罪深かったよね!!」と父と母。双子のオッサンの笑い声。
「泣き叫んだよなァァァァァァァァ!!」と、大男。
「うんうん!!」
「泣いた泣いた!!悔い改めた!!ハレルヤ!!」と、父と母。双子のオッサンの笑い声。

何を言っているのか? どうやら俺達の事ではないらしいが…

やがて、キャンピングカーのエンジン音が聴こえ、車は去ってった。
辺りはもう完全に明るくなっていた。
変態一家が去ったのを完全に確認して、俺は女子トイレに飛び込んだ。

全ての個室を開けたが、誰もいない。鍵も全て壊れていた。そんな馬鹿な…
後から女子トイレに入ってきたカズヤが、俺の肩を叩いて呟いた。

「なぁ、お前も途中から薄々は気がついてたんだろ? 女の子なんて、最初からいなかったんだよ」

2人して幻聴を聴いたとでも言うのだろうか。
確かに、あの変態一家の女の子に対する反応が一切無かった事を考えると、それも頷けるのではあるが…
しかし、あんなに鮮明に聴こえる幻聴などあるのだろうか…


849 その13 sage New! 2009/12/24(木) 22:29:08 ID:o41n3rfp0

駐車場から上りと下りに続く車道があり、そこを下れば確実に国道に出るはずだ。
しかし、再び奴らのキャンピングカーに遭遇する危険性もあるので、あえて森を突っ切る事にした。
街はそんなに遠くない程度に見えているし、周囲も明るいので、まず迷う可能性も少ない。
俺達は無言のまま、森を歩いた。

約2時間後。無事に国道に出る事が出来た。
しかし、着替えもない、荷物もない。
頭に思い浮かんだのは、あの親切なコンビニの店長だった。

国道は、都会並みではないが、朝になり交通量が増えてきている。
あんな目にあって、再びヒッチハイクするのは度胸がいったが、何とかトラックに乗せて貰える事になった。

ドライバーは、俺達の汚れた姿に当初困惑していたが、事情を話すと快く乗せてくれた。
事情と言っても、俺達が体験した事をそのまま話してもどうか、と思ったので、キャンプ中に山の中で迷った、と言う事にしておいた。
運転手も、そのコンビニなら知っているし、良く寄るらしかった。

約1時間後、俺達は例の店長のいるコンビニに到着した。
店長はキャンピングカーの件を知っているので、そのまま俺達が酷い目にあった事を話したのだが、話してる最中に、店長は怪訝な顔をし始めた。

「え?キャンピングカー?
 いや、俺はさぁ、君達があの時急に店を出て国道沿いを歩いて行くので、止めたんだよ。
 俺に気を使って、送ってもらうのが悪いので、歩いていったのかな、と。
 10mくらい追って行って、こっちが話しかけても君らがあんまり無視するもんだから、こっちも正直気ィ悪くしちゃってさ。どうしたのさ?(笑)」

…どういう事なのか。

俺達は、確かにあのキャンピングカーがコンビニに止まり、レジで会計も済ませているのを見ている。
会計したのは店長だ。
もう1人のバイトの子もいたが、あがったのか今はいない様だった。

店長もグルか??
不安が胸を過ぎった。カズヤと目を見合わせる。

「すみません、ちょっとトイレに」とカズヤが言い、俺をトイレに連れ込む。
「どう思う?」と俺。

「店長がウソを言ってるとも思えんが、万が一、あいつらの関連者としたら、って事だろ?
 でも、何でそんな手の込んだ事する必要がある?みんなイカレてるとでも?まぁ、釈然とはしないよな。
 じゃあ、こうしよう。大事をとって、さっきの運ちゃんに乗せてもらわないか?」


851 その14 sage New! 2009/12/24(木) 22:30:28 ID:o41n3rfp0

それが1番良い方法に思えた。俺達の意見がまとまり、トイレを出ようとしたその瞬間、個室のトイレから水を流す音と共に、あのミッ○ーマ○スのマーチの口笛が聞こえてきた。
周囲の明るさも手伝ってか、恐怖よりまず怒りがこみ上げて来た。
それはカズヤも同じだった様だ。

「開けろオラァ!!」とガンガンドアを叩くカズヤ。ドアが開く。
「な…なんすか!?」制服を着た地元の高校生だった。
「イヤ…ごめんごめん、ははは…」と苦笑するカズヤ。

幸い、この騒ぎはトイレの外まで聞こえてはいない様子だった。
男子高校生に侘びを入れて、俺達は店長と談笑するドライバーの所へ戻った。

「店長さんに迷惑かけてもアレだし、お兄さん、街までお願いできませんかねっ これで!」

と、ドライバーが吸っていた銘柄のタバコを1カートン、レジに置くカズヤ。
交渉成立だった。

例の変態一家の件で、警察に行こうとはさらさら思わなかった。
あまりにも現実離れし過ぎており、俺達も早く忘れたかった。
リュックに詰めた服が心残りではあったが…

ドライバーのトラックが、市街に向かうのも幸運だった。
タバコの贈り物で終始上機嫌で運転してくれた。

いつの間にか、俺達は車内で寝ていた。
ふと目が覚めると、ドライブインにトラックが停車していた。
ドライバーが焼きソバを3人分買ってきてくれて、車内で食べた。

車が走り出すと、カズヤは再び眠りに落ち、俺は再び眠れずに、窓の外を見ながらあの悪夢の様な出来事を思い返していた。
一体、あいつらは何だったのか。トイレの女の子の泣き声は…

「あっ!!」

思案が吹き飛び、俺は思わず声を上げていた。


852 その15 sage New! 2009/12/24(木) 22:31:11 ID:o41n3rfp0

「どうした?」とドライバーのお兄さん。
「止めて下さい!!」
「は?」
「すみません、すぐ済みます!!」
「まさかここで降りるのか?まだ市街は先だぞ」と、しぶしぶトラックを止めてくれた。

この問答でカズヤも起きたらしい。

「どうした?」
「あれ、見ろ」

俺の指差した方を見て、カズヤが絶句した。
朽ち果てたドライブインに、あのキャンピングカーが止まっていた。

間違いない。色合い、形、フロントに描かれた十字架…しかし、何かがおかしかった。
車体が何十年も経った様に、ボロボロに朽ち果てており、全てのタイヤがパンクし、窓ガラスも全て割れていた。

「すみません、5分で戻ります、5分だけ時間下さい」
とドライバーに説明し、トラックを路肩に止めてもらったまま、俺達はキャンピングカーへと向かった。

「どういう事だよ…」とカズヤ。こっちが聞きたいくらいだった。
近づいて確認したが、間違いなくあの変態一家のキャンピングカーだった。
周囲の明るさ・車の通過する音などで安心感はあり、恐怖感よりも「なぜ?」と言う好奇心が勝っていた。

錆付いたドアを引き開け、酷い匂いのする車内を覗き込む。


853 その16 sage New! 2009/12/24(木) 22:32:00 ID:o41n3rfp0

「オイオイオイオイ、リュック!!俺らのリュックじゃねぇか!!」カズヤが叫ぶ。

…確かに俺達が車内に置いて逃げて来た、リュックが2つ置いてあった。
しかし、車体と同様に、まるで何十年も放置されていたかの如く、ボロボロに朽ち果てていた。
中身を確認すると、服や日用雑貨品も同様に朽ち果てていた。

「どういう事だよ…」もう1度カズヤが呟いた。
何が何だか、もはや脳は正常な思考が出来なかった。
とにかく、一時も早くこの忌まわしいキャンピングカーから離れたかった。

「行こう、行こう」カズヤも怯えている。
車内を出ようとしたその時、キャンピングカーの1番置くのドアの奥で「ガタッ」と音がした。
ドアは閉まっている。開ける勇気はない。

俺達は恐怖で半ばパニックになっていたので、そう聴こえたかどうかは、今となっては分からないし、もしかしたら猫の鳴き声だったかもしれない。
が、確かに、その奥のドアの向こうで、その時はそう聴こえたのだ。

「マ ー マ ! ! 」

俺達は叫びながらトラックに駆け戻った。
すると、なぜかドライバーも顔が心なしか青ざめている風に見えた。
無言でトラックを発進させるドライバー。

「何かあったか?」「何かありました?」

同時にドライバーと俺が声を発した。ドライバーは苦笑し、

「いや…俺の見間違いかもしれないけどさ…あの廃車…お前ら以外に誰もいなかったよな?
 いや、居るわけないんだけどさ…いや、やっぱ良いわ」
「気になります、言って下さいよ」とカズヤ。

「いやさ…見えたような気がしたんだよ。カウボーイハット?って言うのか?
 日本で言ったら、ボーイスカウトが被るような。それを被った人影が見えた気が…
 でよ、何故かゾクッとしたその瞬間、俺の耳元で口笛が聴こえてよ…」

「どんな感じの…口笛ですか?」

「曲名は分かんねぇけど(口笛を吹く)こんな感じでよ…いやいやいや、何でもねぇんだよ! 俺も疲れてるのかね」

運転手は笑っていたが、運転手が再現してみた口笛は、ミッ○ーマ○スのマーチだった。


854 終 sage New! 2009/12/24(木) 22:32:41 ID:o41n3rfp0

30分ほど無言のまま、トラックは走っていた。
そして市街も近くなったと言う事で、最後にどうしても聞いておきたい事を、俺はドライバーに聞いてみた。

「あの、最初に乗せてもらった国道の近くに、山ありますよね?」
「あぁ、それが?」
「あそこで前に何か事件とかあったりしました?」

「事件…?いやぁ聞かねぇなぁ…山つっても、3つくらい連なってるからなぁ、あの辺は。
 あ~、でもあの辺の山で大分昔に、若い女が殺された事件があったとか…それくらいかぁ?
 あとは、普通にイノシシの被害だな。怖いぜ、野生のイノシシは」

「女が殺されたところって」
「トイレすか?」カズヤが俺の言葉に食い気味に入ってきた。

「あぁ、確かそう。何で知ってる?」

市街まで送ってもらった運転手に礼を言い、安心感からか、その日はホテルで爆睡した。
翌日~翌々日には、俺達は新幹線を乗り継いで地元に帰ったいた。

なるべく思い出したくない悪夢の様な出来事だったが、時々思い出してしまう。

あの一家は一体何だったのか?
実在の変態一家なのか?
幻なのか?
この世の者ではないのか?
あの山のトイレで確かに聞こえた女の子の泣き叫ぶ声は、何だったのか?
ボロボロに朽ち果てたキャンピングカー、同じように朽ちた俺達のリュックは、一体何を意味するのか?


「おっ♪ おっ♪ おま○こ おま○こ 舐めたいなっ♪ ペロペロ~ ペロペロ~」

先日の合コンが上手く行った、カズヤのテンションが上がっている。
たまに遊ぶ悪友の仲は今でも変わらない。
コイツの底抜けに明るい性格に、あの悪夢の様な旅の出来事が、いくらか気持ち的に助けられた気がする。
30にも手か届こうかとしている現在、俺達は無事に就職も出来(大分前ではあるが)、普通に暮らしている。

カズヤは、未だにキャンピングカーを見ると駄目らしい。
俺はあの「ミッ○ーマ○スのマーチ」がトラウマになっている。

チャンララン チャンララン チャンラランララン チャンララン チャンララン チャンラランララン♪

先日の合コンの際も、女性陣の中に1人この携帯着信音の子がおり、心臓が縮み上がったモノだ。
今でもあの一家、とくに大男の口笛が夢に出てくる事がある。
 
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@車
@山・森林

とある事故について

警官をしている友人数年前に体験した話。

そいつは高速道路交通警察隊に努めているんだけど、ある日他の課の課長から呼び出されたんだって。
内容を聞くと、一週間前にあった東北自動車道の事故の詳細を知りたいとのこと。

その事故ってのは、一家四人が乗った自動車が平日の深夜に中央分離帯に激突して全員死亡した事故の事だったらしい。

事件のことを少し詳しく話すと、高速を走行していた長距離トラックから××インターチェンジ付近で乗用車が燃えているって通報があって、
夜勤で待機していた友人が現場に直行したんだけど、友人が到着した時には既に乗用車の中にいた人は全員黒こげになって死んでたんだって。

その後身元の特定と検死が行われて、歯の治療記録から死んだのは東京西多摩地方に住んでいる家族だってのがわかった。
死んだのは加藤正さん(仮名)とその妻の恵美、長男の正一、長女の恵那の四人。
アルコールが検出されたとか、見通しの悪い場所だったとかの事故を起こすような要因は見つからなかったんだけど、特に不審な点もなくそのままハンドル操作のミスによる普通の事故として処理されたんだって。

それで友人も特に何の変哲もない事故でしたよってよその課の課長に言ったらしいんだけど、その課長が実は、て言って呼び出した理由を話してくれたんだって。

その話によると、昨日の夜に少年が東京の○○市にある警察署に訪ねてきて、
「僕が死んだとニュースでやっていたのだけど、僕はいったい誰なのでしょうか?」って言ったらしい。

少年の話をまとめると、一昨日の朝に朝寝坊して起きたら家に家族が誰もいない。
どこかに行ったのだと思いそのまま気にも留めていなかったが、夜になってもだれも帰ってこないし連絡もない。
心配になって警察に連絡したが、子供の悪戯だと思われたのかすぐ切られてしまった。
祖父母や親戚に連絡してみたが、誰も連絡を受けていないと言われた。

そのまま朝まで待っていたが、つけっぱなしのTVのニュースから、自分も含めた家族全員が死んだことになっていると知った。
そんなことはないはずなので詳しく知りたくて訪ねて来たとのことだったらしい。

その話を聞いた友人はその事故の資料を改めて提出したんだけど、見直してて不思議なことに気づいたんだって。

家族の歯科治療記録との照合で、父親、母親、長女は間違いなく本人だって判明したんだけど、長男は頭部の損傷が激しく、照合ができなかったと記録に書いてある。
しかも家族は青森近くで事故を起こしたんだけど、両親は中部地方出身で東北に知り合いはいないことがその後の調査で明らかになっていた。
その当時は旅行にでも出かけた際の事故って事になったんだけど、どうにも不自然なことが多すぎる。

それで友人は資料を提出してから数日後に、例の課長に事件の進展を聞いてみた。
すると課長は口ごもりながらこう答えたらしい。

例の少年は身体的特徴や見た目は死んだ長男によく似ていたが、歯形が違うため別人だと思われる。
そのことを告げると少年が錯乱したため、心療内科のある警察病院に搬送した。

その後の調査で事故死した家族の家を調査したが、事故後誰かが住んでいた形跡はなかった。
そのことを告げると、少年は完全に精神に異常をきたしてしまったため、結局どのこの誰だか分らず今も病院にいる。
もう済んだ事だから、今後かかわらなくていい。

友人はそこまで話すと最後にこう言った。

黒コゲの死体は本当は一体誰で、自称長男の少年は一体誰なんだろうな?
それと、あの家族は何で平日に誰も知り合いのいないところに向かっていたんだ?

俺は思うんだ。

あの家族は何かから逃げてたんじゃないかって。
何から逃げてたのかはわからないけどな
 
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リンフォン

183 本当にあった怖い名無し 2006/05/13(土) 13:10:26 ID:d6nOfoGU0

先日、アンティーク好きな彼女とドライブがてら、骨董店やリサイクルショップを回る事になった。
俺もレゲーとか古着など好きで、掘り出し物のファミコンソフトや古着などを集めていた。
買うものは違えども、そのような物が売ってる店は同じなので、楽しく店を巡っていた。

お互い掘り出し物も数点買う事ができ、テンション上がったまま車を走らせていると、一軒のボロッちい店が目に付いた。

「うほっ!意外とこんな寂れた店に、オバケのQ太郎ゴールドバージョンが眠ってたりすんだよな」

浮かれる俺を冷めた目で見る彼女と共に、俺は店に入った。
コンビニ程度の広さの、チンケな店だった。
主に古本が多く、家具や古着の類はあまり置いていない様だった。
ファミコンソフトなど、「究極ハリキリスタジアム」が嫌がらせのように1本だけ埃を被って棚に置いてあるだけだった。

もう出ようか、と言いかけた時、「あっ」と彼女が驚嘆の声を上げた。
俺が駆け寄ると、ぬいぐるみや置物などが詰め込まれた、バスケットケースの前で彼女が立っていた。

「何か掘り出し物あった?」
「これ、凄い」

そう言うと彼女は、バスケットケースの1番底に押し込まれる様にあった、正20面体の置物を、ぬいぐるみや他の置物を掻き分けて手に取った。

今思えば、なぜバスケットケースの1番底にあって外からは見えないはずの物が彼女に見えたのか、不思議な出来事はここから既に始まっていたのかもしれない。


184 RINFONE Ⅱ 2006/05/13(土) 13:20:06 ID:d6nOfoGU0

「何これ?プレミアもん?」
「いや、見たことないけど…この置物買おうかな」

まぁ、確かに何とも言えない落ち着いた色合いのこの置物、オブジェクトとしては悪くないかもしれない。
俺は、安かったら買っちゃえば、と言った。

レジにその正20面体を持って行く。
しょぼくれたジイさんが古本を読みながら座っていた。

「すいません、これいくらですか?」

その時、俺は見逃さなかった。
ジイさんが古本から目線を上げ、正20面体を見た時の表情を。
驚愕、としか表現出来ないような表情を一瞬顔に浮かべ、すぐさま普通のジイさんの表情になった。

「あっ、あぁ…これね…えーっと、いくらだったかな。ちょ、ちょっと待っててくれる?」

そう言うとジイさんは、奥の部屋(おそらく自宅兼)に入っていった。
奥さんらしき老女と何か言い争っているのが断片的に聞こえた。
やがて、ジイさんが1枚の黄ばんだ紙切れを持ってきた。

「それはね、いわゆる玩具の1つでね、リンフォンって名前で。この説明書に詳しい事が書いてあるんだけど」

ジイさんがそう言って、黄ばんだ汚らしい紙を広げた。随分と古いものらしい。

紙には例の正20面体の絵に「RINFONE(リンフォン)」と書かれており、それが「熊」→「鷹」→「魚」に変形する経緯が絵で描かれていた。
わけの分からない言語も添えてあった。
ジイさんが言うにはラテン語と英語で書かれているらしい。

「この様に、この置物が色んな動物に変形出来るんだよ。
 まず、リンフォンを両手で包み込み、おにぎりを握るように撫で回してごらん」

彼女は言われるがままに、リンフォンを両手で包み、握る様に撫で回した。
すると、「カチッ」と言う音がして、正20面体の面の1部が隆起したのだ。


185 RINFONE Ⅲ 2006/05/13(土) 13:37:16 ID:d6nOfoGU0

「わっ、すご~い」
「その出っ張った物を回して見たり、もっと上に引き上げたりしてごらん」

ジイさんに言われるとおりに彼女がすると、今度は別の1面が陥没した。

「すご~い!パズルみたいなもんですね!ユウ(←俺の敬称)もやってみたら」

この仕組みを言葉で説明するのは凄く難しいのだが、「トランスフォーマー」と言う玩具をご存知だろうか?カセットテープがロボットに変形したり、拳銃やトラックがロボットに…と言う昔流行った玩具だ。
このリンフォンも、正20面体のどこかを押したり回したりすると、熊や鷹、魚などの色々な動物に変形する、と想像してもらいたい。

もはや、彼女はリンフォンに興味深々だった。俺でさえ凄い玩具だと思った。

「あの…それでおいくらなんでしょうか?」彼女がおそるおそる聞くと、
「それねぇ、結構古いものなんだよね…でも、私らも置いてある事すら忘れてた物だし…よし、特別に1万でどうだろう?ネットなんかに出したら好きな人は数十万でも買うと思うんだけど」

そこは値切り上手の彼女の事だ。
結局は6500円にまでまけてもらい、ホクホク顔で店を出た。

次の日は月曜日だったので、一緒にレストランで晩飯を食べ終わったら、お互いすぐ帰宅した。


189 RINFONE Ⅳ 2006/05/13(土) 14:03:18 ID:d6nOfoGU0

月曜日。仕事が終わって家に帰り着いたら、彼女から電話があった。

「ユウくん、あれ凄いよ、リンフォン。ほんとパズルって感じで、動物の形になってくの。
 仕事中もそればっかり頭にあって、手につかない感じで。
 マジで下手なTVゲームより面白い」

と一方的に興奮しながら彼女は喋っていた。
電話を切った後、写メールが来た。

リンフォンを握っている彼女の両手が移り、リンフォンから突き出ている、熊の頭部のような物と足が2本見えた。
俺は、良く出来てるなぁと感心し、その様な感想をメールで送り、やがてその日は寝た。

次の日、仕事の帰り道を車で移動していると、彼女からメールが。

「マジで面白い。昨日徹夜でリンフォンいじってたら、とうとう熊が出来た。見にきてよ」

と言う風な内容だった。
俺は苦笑しながらも、車の進路を彼女の家へと向けた。

「なぁ、徹夜したって言ってたけど、仕事には行ったの?」

着くなり俺がそう聞くと、

「行った行った。でも、おかげでコーヒー飲み過ぎて気持ち悪くなったけど」

と彼女が答えた。
テーブルの上には、4つ足で少し首を上げた、熊の形になったリンフォンがあった。

「おぉっ、マジ凄くないこれ?仕組みはどうやって出来てんだろ」
「凄いでしょう?ほんとハマるこれ。次はこの熊から鷹になるはずなんだよね。早速やろうかなと思って」
「おいおい、流石に今日は徹夜とかするなよ。明日でいいじゃん」
「それもそうだね」

と彼女は良い、簡単な手料理を2人で食べて、1回SEXして(←書く必要あるのか?寒かったらスマソ)その日は帰った。
ちなみに、言い忘れたが、リンフォンは大体ソフトボールくらいの大きさだ。


190 RINFONE Ⅴ 2006/05/13(土) 14:05:48 ID:d6nOfoGU0

水曜日
。通勤帰りに、今度は俺からメールした。

「ちゃんと寝たか?その他もろもろ、あ~だこ~だ…」すると
「昨日はちゃんと寝たよ!今から帰って続きが楽しみ」と返事が返ってきた。

そして夜の11時くらいだったか。
俺がPS2に夢中になっていると、写メールが来た。

「鷹が出来たよ~!ほんとリアル。これ造った人マジ天才じゃない?」

写メールを開くと、翼を広げた鷹の形をしたリンフォンが移してあった。
素人の俺から見ても精巧な造りだ。今にも羽ばたきそうな鷹がそこにいた。
もちろん、玩具だしある程度は凸凹しているのだが。それでも良く出来ていた。

「スゲー、後は魚のみじゃん。でも夢中になりすぎずにゆっくり造れよな~」
と返信し、やがて眠った。

木曜の夜。
俺が風呂を上がると、携帯が鳴った。彼女だ。

「ユウくん、さっき電話した?」
「いいや。どうした?」

「5分ほど前から、30秒感覚くらいで着信くるの。
 通話押しても、何か街の雑踏のザワザワみたいな、大勢の話し声みたいなのが聞こえて、すぐ切れるの。
 着信見たら、普通(番号表示される)か(非通知)か(公衆)とか出るよね?
 でもその着信見たら(彼方(かなた))って出るの。こんなの登録もしてないのに。気持ち悪くて」

「そうか…そっち行ったほうがいいか?」
「いや、今日は電源切って寝る」
「そっか、ま、何かの混線じゃない?あぁ、所でリンフォンどうなった?魚は」
「あぁ、あれもうすぐ出来るよ、終わったらユウくんにも貸してあげようか」
「うん、楽しみにしてるよ」


204 RINFONE Ⅵ 2006/05/13(土) 14:55:33 ID:d6nOfoGU0

金曜日。
奇妙な電話の事も気になった俺は、彼女に電話して、家に行く事になった。
リンフォンはほぼ魚の形をしており、あとは背びれや尾びれを付け足すと、完成という風に見えた。

「昼にまた変な電話があったって?」
「うん。昼休みにパン食べてたら携帯がなって、今度は普通に(非通知)だったんで出たの。
 それで通話押してみると、(出して)って大勢の男女の声が聞こえて、それで切れた」
「やっぱ混線かイタズラかなぁ?明日ド0モ一緒に行ってみる??」
「そうだね、そうしようか」

その後、リンフォンってほんと凄い玩具だよな、って話をしながら魚を完成させるために色々いじくってたが、なかなか尾びれと背びれの出し方が分からない。
やっぱり最後の最後だから難しくしてんのかなぁ、とか言い合いながら、四苦八苦していた。

やがて眠くなってきたので、次の日が土曜だし、着替えも持ってきた俺は彼女の家に泊まる事にした。

嫌な夢を見た。
暗い谷底から、大勢の裸の男女が這い登ってくる。
俺は必死に崖を登って逃げる。後少し、後少しで頂上だ。助かる。
頂上に手をかけたその時、女に足を捕まれた。

「連  れ  て  っ  て  よ  ぉ  !  !  」

汗だくで目覚めた。まだ午前5時過ぎだった。
再び眠れそうになかった俺は、ボーっとしながら、彼女が置きだすまで布団に寝転がっていた。


205 RINFONE Ⅶ 2006/05/13(土) 14:57:04 ID:d6nOfoGU0

土曜日。

携帯ショップに行ったが大した原因は分からずじまいだった。
そして、話の流れで気分転換に「占いでもしてもらおうか」って事になった。

市内でも「当たる」と有名な「猫おばさん」と呼ばれる占いのおばさんがいる。
自宅に何匹も猫を飼っており、占いも自宅でするのだ。
所が予約がいるらしく、電話すると、運よく翌日の日曜にアポが取れた。

その日は適当に買い物などして、外泊した。

日曜日。
昼過ぎに猫おばさんの家についた。チャイムを押す。

「はい」
「予約したた00ですが」
「開いてます、どうぞ」

玄関を開けると、廊下に猫がいた。
俺たちを見ると、ギャッと威嚇をし、奥へ逃げていった。

廊下を進むと、洋間に猫おばさんがいた。文字通り猫に囲まれている。
俺たちが入った瞬間、一斉に「ギャーォ!」と親の敵でも見たような声で威嚇し、散り散りに逃げていった。
流石に感じが悪い。彼女と困ったように顔を見合わせていると、

「すみませんが、帰って下さい」

と猫おばさんがいった。
ちょっとムッとした俺は、どういう事か聞くと、

「私が猫をたくさん飼ってるのはね、そういうモノに敏感に反応してるからです。
 猫たちがね、占って良い人と悪い人を選り分けてくれてるんですよ。こんな反応をしたのは始めてです」

俺は何故か閃くものがあって、彼女への妙な電話、俺の見た悪夢をおばさんに話した。すると、

「彼女さんの後ろに、、動物のオブジェの様な物が見えます。今すぐ捨てなさい」

と渋々おばさんは答えた。
それがどうかしたのか、と聞くと

「お願いですから帰って下さい、それ以上は言いたくもないし見たくもありません」とそっぽを向いた。

彼女も顔が蒼白になってきている。
俺が執拗に食い下がり、

「あれは何なんですか?呪われてるとか、良くアンティークにありがちなヤツですか?」

おばさんが答えるまで、何度も何度も聞き続けた。
するとおばさんは立ち上がり、

「あれは凝縮された極小サイズの地獄です!!地獄の門です、捨てなさい!!帰りなさい!!」
「あのお金は…」

「入   り   ま   せ   ん   !   !」

この時の絶叫したおばさんの顔が、何より怖かった。


207 RINFONE Ⅷ 2006/05/13(土) 14:58:32 ID:d6nOfoGU0

その日彼女の家に帰った俺たちは、すぐさまリンフォンと黄ばんだ説明書を新聞紙に包み、ガムテープでぐるぐる巻きにして、ゴミ置き場に投げ捨てた。
やがてゴミは回収され、それ以来これといった怪異は起きていない。

数週間後、彼女の家に行った時、アナグラム好きでもある彼女が、紙とペンを持ち、こういい始めた。

「あの、リンフォンってRINFONEの綴りだよね。偶然と言うか、こじ付けかもしれないけど、これを並べ替えるとINFERNO(地獄)とも読めるんだけど…」

「…ハハハ、まさか偶然偶然」
「魚、完成してたら一体どうなってたんだろうね」
「ハハハ…」

俺は乾いた笑いしか出来なかった。
あれがゴミ処理場で処分されていること、そして2つ目がないことを、俺は無意識に祈っていた。
 
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「何読んでるの?何読んでるの?」

本屋で本を読んでいたら、本棚の横から顔だけが出てきて、
「何読んでるの?何読んでるの?」
とクソガキに言われた。

俺に言ってるんだな、と直ぐに分かるぐらいに俺を見ていた。
「何?」とちょっとキレ気味に言うとスッと顔を引っ込めた。

数分後、また同じ様に「何読んでるの?何読んでるの?」と声が聞こえたので横の本棚を見るも誰も居なかった。

どこだ?どこかで他の客にでも言ってるのか?
と思いつつも本に目を戻した瞬間に、俺の股から、
「なんだー、○○(本の題名)を読んでるのかー」と言いながら顔を出してるクソガキがいた。

あまりにも常軌を逸した行動に「おい!いい加減にしろ」と怒りながら顔を足で挟もうとすると、
顔だけでズルズルと滑りながら本来体が在るべき方向とは逆側に動いていった。
そしてその顔はズルズルとそのまま横の本棚まで這っていき、本棚の横から顔を出して

「次は何読むの?次は何読むの?」

と目を見開いて言い出した。
まるで整形手術でもしたんじゃないか?というぐらいに目は大きく開いた。

あまりの恐怖に本を置いて本屋から出ると、その間際に「家どこ?家どこ?」と聞かれたが無視して帰って来た。

んで、さっき、小便があまりにもしたくなってトイレに起きたら、外で女の人の悲鳴が聞こえた。
「きゃああ」と言いながら逃げてる女性の声に混じって、確かに

「ここどこ?ここどこ?」

とあの声が聞こえた。
 
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